サウナ事故急増というニュースは本当?消費者庁のデータをもとに解説します
- 2025年1月23日
最近、サウナを利用する人が増える中で、サウナ事故が急増しているというニュースを耳にした方も多いのではないでしょうか。
リラックスや健康のために通っているサウナが、実は危険を伴う場所だと聞くと、不安に感じるかもしれません。
でも、果たして本当にそんなに事故が増えているのでしょうか?
今回は、消費者庁など信頼できる情報元が公表しているデータをもとに、実際にサウナ事故がどの程度発生しているのか、その実態を詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、サウナの安全性について知識を深めて、安心してサウナを楽しんでください!
サウナ事故急増のニュースについて動画でも解説しています!
目次
サウナ事故倍増のニュースについて
2024年6月、サウナ事故が増加しているというネットニュースが多くリリースされました。
これは2024年6月5日に消費者庁より発表されたニュース「サウナ浴での事故に注意 -体調に合わせて無理せず安全に-」を受けてのことです。
この発表では、2014年~2023年度の10年間のうちに起きたサウナの事故数や事故による傷病の詳細がまとめられています。
では、サウナ事故は実際に増えているのでしょうか?データを詳しく見ていきましょう。
消費者庁によるサウナ事故件数の発表
消費者庁の「サウナ浴での事故に注意 -体調に合わせて無理せず安全に-」では、消費者庁と国民生活センターが管理する「事故情報データバンク」に集積されたデータをもとに、日本で起きたサウナ事故件数を発表しています。
2014~2023年度に起きたサウナ事故件数の推移は、以下の通りです。
グラフを見てみるとこの10年間で、サウナ事故数は増加傾向にあることが分かります。
サウナ利用1回あたりの事故率は増加している?
とはいえ、サウナ人口が増えていたりサウナ利用者がサウナを利用する回数が増えている場合、それに比例してサウナ事故件数が増加するのは当然のことです。
そこでサウナ人口と、1人当たりの利用回数を調査しました。
一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所の【日本のサウナ実態調査2023】によると、2017年以降サウナ人口は徐々に減っているという結果が出ています。※2022年はやや回復傾向
上記2つの調査から算出した、サウナ利用1回あたりの事故率は以下の通りです。
サウナ人口 | 事故件数 | 総利用回数 | 利用1回あたりの事故率 | |
2016年 | 28,786,667人 | 5件 | 345,440,004回 | 0.000001447% |
2017年 | 28,565,813人 | 5件 | 342,789,756回 | 0.000001459% |
2018年 | 27,469,917人 | 6件 | 329,638,404回 | 0.000001820% |
2019年 | 28,243,683人 | 2件 | 338,924,196回 | 0.000000590% |
2020年 | 25,837,430人 | 6件 | 310,049,160回 | 0.000001935% |
2021年 | 15,737,221人 | 5件 | 188,846,652回 | 0.000002648% |
2022年 | 16,815,321人 | 10件 | 201,783,852回 | 0.000004956% |
数値を見ると、日本にサウナブームが到来した2019年以降は利用1回あたりの事故率は増加していることがわかります。
サウナ事故による怪我82人は本当か?
サウナ事故件数やサウナ利用1回あたりの事故率は、ここ数年で増加しています。
しかし、ネットニュースでよく目にする「サウナ事故による怪我82人」という数字については注意が必要です。
実は、この82人というのは2014~2023年度の10年間で累計された数字です。
つまり、2023年度の1年間に82人がサウナ事故で怪我をしたというわけではありません。
この点を誤解しないようにすることが重要です。
【参考】サウナとパーソナルジムでの事故件数を比較
極論になってしまいますが、人は生きていれば誰しも事故に遭う可能性があるものです。
そんな中でサウナは特別事故率が高いものなのか、パーソナルジムの事故件数との比較という観点から考えてみましょう。
以下、サウナとパーソナルジムの店舗数と事故件数をまとめました。
2023年 | 店舗数 | 事故件数 |
---|---|---|
サウナ | 約1,2万件 | 10件 |
パーソナルジム | 約5,200件 | 50件 |
2023年のデータによるとサウナの店舗数は約1.2万件で、事故件数は10件です。
一方、パーソナルジムの店舗数は約5,200件で、事故件数は50件となっています。
この数字から見ると、パーソナルジムの事故率はサウナに比べて高いことが分かります。
もちろん利用者数や利用頻度も考慮すべきですが、この比較からは他の活動に比べてサウナ利用時の事故のリスクは極端に高いというわけではないということが言えるのではないでしょうか。
【参考】日本人口に対する事故件数
事故情報データバンクの2022年度のデータでは、日本国内で13,726件の事故が報告されています。
2022年時点の日本人口は約1.25億人ですので、1年間のうちに事故に遭う確率は約0.01%となります。
このことからも、サウナだから事故が多いというわけではなく一般的にどのような状況でも一定の確率で事故は発生するものということができます。
サウナ事故の内訳
サウナ事故による受傷内容の内訳は、以下の通りです。
特に、やけど・切り傷・擦り傷・骨折・打撲が多くなっており、受傷内容の9割を占めています。
さらに、受傷者を年齢別に分けると40~70代が全体の7割を占めるという結果となっています。
サウナの利用者層は20代がもっとも多く、年齢が上がるにつれて少なくなっていくという報告がありますので、受傷者が40~70代が多いというのは利用人数に比例していません。
そのため、40~70代は特にサウナで怪我や体調不良を起こしやすいため注意が必要と言えます。
以下で、それぞれの受傷の状況の例や対策方法を解説していきます。
サウナでよくある事故①やけど
サウナでやけどを負った方の事故事例は、以下の通りです。
サウナを利用中、熱いと思ったものの10分間ヨガのポーズをとり続け、臀部にやけどを負った。(20歳代、女性)
引用:消費者庁
温泉施設内の貸切りサウナを利用中、椅子から立ち上がった際に壁にむき出ていた裸電球が背中に当たってやけどをし、治療が必要となった。(20歳代、男性)
引用:消費者庁
海外のホテルのサウナでロウリュをしましたところ、高熱の蒸気が大量に出て、右手の甲に全治1か月のやけどを負った。(30歳代、女性)
引用:消費者庁
サウナ室は壁や備品が高温になっていることがありますので、注意が必要です。
また、ロウリュによりサウナストーブから発される蒸気は大変高温ですので、手に当たらないように注意してください。
【やけどを防ぐためのチェックリスト】
- サウナストーブやサウナストーンには近づかない
- 肌が壁や照明などの備品に触れないように注意する
- サウナマットやタオルを使用し、直接ベンチに触れない
- ロウリュは控えめに行い、蒸気が手や体にかからないようにする
- ロウリュにより熱い水が跳ねる場合もあるので十分に注意する
施設側の対策として、ストーブに近づいたり肌が触れないようにのストーブ周りをガードで囲ったり、高温になる備品は設置しないようにするとよいでしょう。
また、ロウリュ用の柄杓は持ち手の長さが短いと熱い蒸気が手にかかりやすくなりますので、安全に使える柄杓を用意しましょう。
ロウリュで1度に大量の水をかけるとやけどの原因となりますので、注意書きなどでかける水の量の目安を表示しておくことも効果的です。
サウナでよくある事故②切り傷・擦り傷
サウナで怪我を負った方の事故事例は、以下の通りです。
スイミングスクールのサウナに入ろうとしたとき、サウナ室から出ようとした人がドアを開けたため、ドアが当たり足の親指の爪が剥がれた。(70歳代、女性)
引用:消費者庁
サウナ室のドア付近は、足をぶつけたり挟んで爪が剥がれたりという怪我の可能性が高いエリアです。
特に、ドアの向こうに人がいないかということを注意して静かに開閉するようにしましょう。
また、サウナ内の床やベンチは水分により滑りやすくなっていることもあり、転倒時に怪我をすることもあります。
【切り傷・擦り傷を防ぐためのチェックリスト】
- サウナ内が滑りやすくないか、尖った部分がないか確認
- 転倒に注意しサウナ内ではゆっくり歩く
- サウナの出入り口はゆっくりと開閉する
- サウナ内に不要なものをサウナ内に持ち込まないことでつまずくリスクを減らす
施設側の対策としては、サウナ内にとがったものや木材のささくれ、邪魔な備品など、怪我の原因となるものがないか確認することが大切です。
また、床が滑りやすくなっていないかも十分に注意し、定期的な清掃が必要となります。
サウナでよくある事故③骨折・打撲
サウナで骨折・打撲を負った方の事故事例は、以下の通りです。
個室サウナを利用中、床の段差で足を滑らせ転倒し、右肘を打撲した。(40歳代、女性)
引用:消費者庁
骨折・打撲に関しても、転倒の衝撃が原因となるケースが多いです。
床の滑りやすさには十分に注意し、サウナ内ではゆっくり慎重に歩くことを習慣にしましょう。
【骨折・打撲を防ぐためのチェックリスト】
- 段差やベンチの高さに注意
- 濡れた床での滑りに注意
- サウナ内はゆっくりとした動作で移動
- サウナマットやタオルを使用して、足元を滑りにくくする
- サウナの出入り口で周囲の人に注意を払い、扉が閉まるタイミングで挟まれないようにする
施設側の対策としては、やはり床のぬめりを定期的な清掃でしっかり取ることとつまずく原因になるような備品を置かないことを徹底しましょう。
また、ドアにゆっくり開閉するようにという注意書きを貼っておくのもおすすめです。
サウナでよくある事故④めまい・意識障害
サウナでめまい・意識障害を起こした方の事故事例は、以下の通りです。
スポーツクラブのサウナを利用中、心臓発作を起こし3日間入院。医師からサウナ等は利用しないように言われた。以前、心筋梗塞を起こしたことがあった。
(50歳代、女性)
引用:消費者庁
スーパー銭湯のサウナ室で、座った状態で意識を失った。
(70歳代、男性)
引用:消費者庁
めまいや意識障害は、特に40歳以上に多い受傷内容です。
もともと心臓疾患、脳疾患、高血圧などの既往歴がある方やその他の持病がある方は、サウナ利用前に医師に相談しましょう。
また、大きな持病がなくても40代以降になると血圧の変化によりめまいや意識障害のリスクが高まりますので、体調が優れない日などはサウナ利用は避けましょう。
さらに、水風呂も合わせて利用すると血圧が急降下しさらにリスクは高まります。
体調に合わせて水風呂の利用は避けたり、サウナを短時間で済ませるなどの調整が必要になります。
【めまい・意識障害を防ぐためのチェックリスト】
- 水分補給をこまめに行い、脱水症状を予防する
- 疲労感や体調不良を感じたらサウナを避ける
- サウナに入ったら最初は低い段に座り体を徐々に温度に慣らす
- 長時間(10分以上)のサウナ浴は避ける
- サウナ後は急に立ち上がらない
サウナ事故は利用者・施設側どちらの責任になる?
サウナ事故が発生した際、その責任が利用者と施設のどちらにあるのかは、ケースごとに異なります。
結論から言えば、施設側が事故を予測できかつ予防対策を怠っていた場合には、施設側が損害賠償責任を負う可能性があります。
一方で、利用者が事故を容易に回避できた状況であれば、利用者の責任が重くなることもあります。
たとえば、既往歴がある利用者がサウナで心臓発作を起こした場合、施設側がそのリスクを予見するのは難しいため、責任が問われにくいです。
一方で、サウナ初心者が誤った方法で利用し事故に遭った場合、施設側には対策を取る義務があると考えられるでしょう。
施設側の対策としては、正しい利用方法についてや利用時の注意点を記載した張り紙を貼っておくなどが例として挙げられます。
最終的に責任の有無や割合は、施設側が事故予防策を講じたかどうか、また利用者が自己管理を怠ったかどうかといった点を総合的に判断して決まります。
海外のサウナ事故事情
サウナ発祥の地であるフィンランドの調査では、特に夏季に高齢男性がやけどを負うケースが多く、やけどの約90%が滑って転倒したり、めまいによる転倒が原因とされています。
オーストリアのインスブルック大学病院で行われた調査によると、こちらもやけどを含むサウナでの事故の約90%は滑って転倒したりめまいによる転倒が原因で、もっとも多い怪我は打撲や捻挫(患者全体の 41.2%)となっています。
転倒の原因としては57.5%が滑落によるもので、30%がめまいや失神によるものです。
このことから、サウナ事故を防ぐためには足元に十分注意して移動することや体調の変化を感じた際にはすぐに休憩することが重要であるとわかりますね。
サウナの健康に与える影響に関するフィンランドの研究
フィンランドではサウナの健康効果について多くの研究が行われており、その中でも心臓や循環器系に対する影響が注目されています。
フィンランドサウナ協会(The Finnish Sauna Society)公式サイトの記事では、サウナによって皮膚の血流が増加し、心拍数が上昇するなどの一時的な変化が見られますが、健康な人にとってこれらの影響は大きなリスクとはならないことが研究により示されているといいます。
むしろ、サウナはリラクゼーションやストレス軽減の効果があることが科学的に証明されています。
一方で、サウナを利用する際の注意点として、特に酩酊状態での利用は危険であり、転倒や心臓発作のリスクが高まることが指摘されています。
また冬の寒冷地では、サウナ後の水泳などが原因で血圧が急上昇することがあり、心臓疾患を抱える人にはリスクが伴うことも報告されています。
水風呂での血圧の変化や不整脈にも注意
水風呂での血圧の変化や不整脈には、特に注意が必要です。
サウナで体が温まった後に冷たい水風呂に入ると、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、不整脈が発生する可能性が高まります。
また、特に足がつかない深さの水風呂を利用する際には溺れる危険性があるため、十分な注意が求められます。
特に
- 心臓疾患や高血圧、脳血管疾患のある人
- 妊娠中の女性
- 飲酒後の人
- ケガをしている人
- 体調が悪い人
はリスクが高まるため、サウナや水風呂の利用を避けるべきです。
特にアウトドアサウナでは、自然の湖や川などを利用することが多いため底に足がつかないケースもあり、十分な安全対策が不可欠と言えます。
関連記事:サウナと水風呂の危険性|死亡事故や緊急搬送事例、サウナ利用を避けるべき人も解説
まとめ
結論として、消費者庁のデータを見ても、サウナ事故が特別高いわけではないことがわかりました。
ただし、利用者はやけどや転倒に十分注意し、無理なくサウナを楽しむことが大切です。
特に転倒による打撲や怪我、骨折などが非常に多くなっているため、環境、体調ともに注意することが必要になります。
また、サウナ施設側も引き続き危機管理を徹底し、安全な環境を提供することが求められます。
使う側、提供者側がともに安全に利用できるように努力することが大切ですね。