サウナで熱中症になることはある?暑熱順化との関係・症状・対策を徹底解説
- 2025年6月30日

サウナは高温環境の中で心身をリフレッシュできる人気の健康習慣ですが、実は熱中症のリスクがあることをご存じでしょうか?
特に夏場や体調が万全でないときは、気づかないうちに体に負担がかかっているケースもあります。
本記事では、
- サウナで熱中症になるリスクと仕組み
- 初期症状や注意すべきサイン
- 安全に楽しむための対策や暑熱順化の活用法
を、医学的な知見や研究データをもとにわかりやすく解説します。
暑い季節こそ、自分の体と向き合いながら、安全に“ととのう”ためのヒントを一緒に見ていきましょう。
目次
サウナで熱中症になることはある?

高温のサウナ室。心地よさを求めて入ったつもりが、じわじわと体に負担をかけていることも……。
サウナでは体温が急激に上昇し、大量の汗とともに水分とミネラルが失われていきます。
これが続くと、体の冷却システムがうまく働かなくなり、熱中症を引き起こすことがあります。
熱中症とは、暑さによって体温調節ができなくなり、めまい・頭痛・吐き気・意識障害などの症状が出る状態のこと。
軽度の「熱けいれん」から、重度の「熱射病」まで、段階的にリスクは上がります。
注意したいのは、“ととのい”との勘違いです。
ととのい中にふらっとしたり、頭がぼーっとするのは一見似ていますが、「不快感」や「不安感」があるなら要注意。
その感覚、実はのぼせや熱中症の前兆かもしれません。
そう感じたらすぐにサウナを出て、水分を取り、体を冷やしましょう。
実際、高齢者を対象とした研究では、入浴やサウナで熱中症を起こすリスクが高まることも報告されています(岐阜大学医学部「入浴と熱中症」より)。
参考研究:入浴による高齢者の熱中症のリスクをまとめた研究|サウナや岩盤浴の注意点も解説
真夏より高温なのにサウナで熱中症になりにくい仕組み

サウナ室の温度は80〜100℃にも達しますが、それにもかかわらず、真夏の屋外よりも熱中症になりにくい傾向があります。
その理由は「湿度」と「体感温度」の関係にあります。
私たちの体は、汗をかき、それが蒸発することで体温を下げています。
しかし、湿度が高いと汗が蒸発しづらくなり、体温調節が難しくなります。
これが、夏の屋外(30〜35℃、湿度60〜70%)で熱中症リスクが高くなる主な要因です。
一方、ドライサウナは温度こそ高いものの、湿度は10〜20%と非常に低く設定されています。
そのため、汗がすばやく蒸発し、体温の上昇をある程度抑えることができるのです。
環境 | 温度 | 湿度 |
真夏の屋外 | 30〜35℃ | 約60〜70% |
ドライサウナ | 80〜100℃ | 約10〜20% |
ただし、これは「短時間・適切な利用」を前提とした話です。
長時間の利用や水分補給を怠ることは、サウナであっても熱中症や脱水症状を招くおそれがあります。
安全に楽しむためには、サウナに入る前後のこまめな水分補給が欠かせません。
特に、発汗によって失われる電解質を補うためには、スポーツドリンクなど塩分を含んだ飲料の摂取が推奨されます。
関連記事:暑い夏こそサウナに入ろう!夏サウナの魅力とメリット、楽しみ方を紹介
サウナ中に熱中症になりやすい人の特徴

以下のような方は、サウナ中に熱中症を起こすリスクが高めです。
- 高齢者
- 心臓病・糖尿病などの持病がある人
- 飲酒後の人
- 寝不足・体調不良のとき
- 水分補給をしていない人
- サウナ初心者
まず注意したいのは、高齢者や持病をもつ方です。
心臓や血管、糖尿病などの疾患がある場合、体温調節機能がうまく働かず、サウナの熱に耐えきれないことがあります。
また、飲酒後や寝不足、体調が優れないときにサウナへ入るのもNG。
思った以上に身体が脱水していたり、判断力が低下しているため、異変に気づかず重症化する恐れがあります。
さらに、水分を摂らずにサウナへ入ることも危険です。
汗とともに失われた水分・塩分を補えない状態では、体温はどんどん上がり続けます。
そして初心者がやりがちなのが、「長く入ったほうが効果がある」と思って我慢してしまうこと。
慣れていない体には数分でも十分な刺激になるため、無理は禁物です。
サウナ熱中症の主な症状と初期サイン
サウナ中に「あれ?」と感じたら、まず疑うべきは熱中症の初期サインです。
初めに現れやすいのは、以下の症状になります。
軽度のサイン ▼
- 頭痛
- めまい・立ちくらみ
- 吐き気
- 倦怠感
「ちょっと疲れたかな」程度に思ってしまいがちですが、これが熱中症の入口です。
そのまま我慢してしまうと、以下の症状へと進行することもあります。
中等度〜重度 ▼
- 立てないほど力が入らない
- 意識がぼんやり・受け答えが遅い
- 異常なほど汗が出る or 逆に汗が止まる
汗が極端に多く出る、または逆に汗が止まってしまうといった異常反応は体がすでに限界に達しているサインです。
どれか一つでも当てはまると感じたら、すぐにサウナを出て涼しい場所へ移動し、水分・塩分をしっかり補給してください。
少しの異変も見逃さないことが、重症化を防ぐ第一歩です。
サウナで熱中症にならないための予防対策

サウナを安全に楽しむためには、事前の準備と適切な入り方が欠かせません。
ここでは、熱中症を防ぐための具体的なポイントをわかりやすく解説します。
入浴前の体調チェック(食事・睡眠・アルコール)
体調が万全でないときのサウナ利用は非常に危険です。
- 風邪気味や強い疲労感があるとき
- 寝不足で頭がぼんやりしているとき
- アルコールを摂取した後
このような状態では、発汗や血圧のコントロールが乱れやすく、熱中症や失神などのリスクが急上昇します。
サウナに入る前は、しっかり睡眠をとり、空腹・満腹を避けた食事タイミングで臨みましょう。
入浴時間・セット数の目安
「長く入れば効果がある」は大きな誤解。
体に無理をさせないためにも、以下の時間と回数を目安にしましょう。
- サウナは1回あたり10分以内
- 水風呂は30秒~2分程度
- セット数は1〜3セットが目安。無理は禁物
「今日は1セットだけにしよう」と思える余裕こそが、安全に楽しむ第一歩です。
サウナ室内で座る場所や姿勢

サウナ室内では、座る位置や姿勢で体への負担が変わります。
- 暑さがマイルドな低い段に座る。
- 体育すわりorあぐらで足先だけ温まらないことを防ぐ。
- 濡れタオルやサウナハットをかぶることで、頭だけ熱くなるのを防ぐ
姿勢・装備を工夫することで、体全体の温まり方を整え、のぼせを防ぐことができます。
水分補給のタイミングと飲むべきもの
サウナでは、大量の汗とともに体内の水分・塩分が失われます。
たとえば、10分×4回のサウナで、平均650ml(=体重約0.65kg分)の水分が体外へ。
体格が大きいほど、その量はさらに増えます。
実験データでは、以下のような発汗量が報告されています。
女性 | 男性 | |
---|---|---|
通常体型 | 約370g | 約500g |
BMI25以上 | 約700g | 約820g |
このように、肥満気味の方ほど脱水しやすく、熱中症リスクが高まることがわかっています。
参考研究:痩せ型と太り気味、サウナでの発汗量はどう違うのか|体格別・発汗量の実験結果
推奨される水分補給のタイミング:
- サウナ前:300〜500ml
- セット間(休憩中):こまめに少しずつ
- サウナ後:さらに300〜500ml程度
おすすめの飲み物は?:
- もっともおすすめ◎ 経口補水液、スポーツドリンク
- おすすめ○ ミネラルウォーター、カフェインレスのお茶
- 避けるべき× アルコールやカフェイン飲料(利尿作用あり・逆効果)
正しい水分補給は、快適さと安全性のどちらも高める重要なポイントです。
参考研究:サウナ後の水分補給は「経口補水液」が効果的|ミネラルウォーターとの比較研究で明らかに
運動後のサウナで暑熱順化し熱中症対策!

暑熱順化(しょねつじゅんか)とは、繰り返し暑さに身を置くことで、体が高温環境に慣れていく生理的な適応反応のことです。
汗をかきやすくなったり、心拍数の上昇が抑えられたりと、熱に強い体へと変化していきます。
この暑熱順化を促す手段のひとつとして注目されているのが、運動後のサウナ利用です。
2021年にイギリスのバーミンガム大学が発表した研究では、軽い運動の後にサウナ浴を3週間継続したグループにおいて、以下のような暑熱耐性の向上が確認されました。
- 体温・心拍数・発汗の反応が安定し、熱ストレスに強くなった
- VO₂max(最大酸素摂取量)が8%増加
- 最大運動持続時間が12%延びた
- 乳酸4mmol/L到達時のスピードが0.6km/h向上
つまり、暑い環境での耐久力が高まるだけでなく、通常の気温下でも運動パフォーマンスが向上する可能性があるということです。
暑さに備えるだけでなく、日常的な体力・持久力の向上を目指す方にも、「運動×サウナ」の組み合わせは有効な選択肢と言えるでしょう。
参考研究:運動後のサウナで暑さに強く!持久力も向上する“暑熱順化”の方法
熱中症対策に水風呂を活用する方法

水風呂はサウナの“ととのい”アイテムというイメージが強いですが、実は熱中症予防や応急処置としても非常に優れた効果があります。
とくに、体が過度に熱を持った状態である運動後やサウナ後の「深部体温上昇」時には、冷水浴(Cold Water Immersion:CWI)が効果的です。
アメリカで2015年に発表された分析では、冷水浴には自然回復の約2倍速いスピード(0.08℃/分)で体温を下げる効果があることが示されました。
最も効果的な条件:
- 水温10℃以下
- 全身(胴体+手足すべて)を10分間程度しっかり浸す
部分的な冷却(例:手先・前腕のみ)では効果が弱く、緊急時の体温冷却には不向きとされています。
この研究は、熱中症リスクの高いスポーツ現場だけでなく、日常的な高温環境での冷却法としても応用可能です。
もちろん、サウナ後のクールダウンにも有効です。
一方で、イギリスのPaul R Jonesらの研究(2012年)では、運動前に冷水浴を行うことでパフォーマンスが向上する可能性が示されています。
この手法は「プレクーリング」と呼ばれ、体温をあらかじめ下げておくことで、体内に“熱の貯金”をつくり、暑さに強くなるという考え方です。
プレクーリングには
- 暑熱環境下での持久力の維持
- 運動や作業のパフォーマンス向上
といった効果が期待され、サウナ前の軽い冷水浴や冷水シャワーにも応用できます。
サウナでの熱中症が不安な方向け水風呂利用法
こんな使い方もおすすめ:サウナ前に10秒程度の水風呂や冷水シャワーを浴びることで、体温の上昇を緩やかに抑えることが可能です。
冷水は上手に使えば熱中症リスクを下げ、パフォーマンスも高めてくれる頼れる存在です。
まとめ|暑い夏もうまくサウナを活用しましょう

サウナは、正しく使えば暑熱順化を促し、熱中症に強い体づくりをサポートしてくれる存在です。
一方で、使い方を誤ると体に大きな負担がかかり、かえって熱中症を引き起こすリスクもあります。
安全にサウナを楽しむために、大切なポイントは以下のとおりです。
サウナ中の熱中症を防ぐために:
- 体調がすぐれないときや飲酒後は利用を避ける
- 長時間の利用は控え、10分以内を目安に
- こまめな水分補給と適度な休憩を忘れずに
- 初心者は下段から、無理のない姿勢と時間設定で
暑さに強くなる使い方:
- 運動後にサウナを取り入れることで暑熱順化の効果が向上
- サウナ前後の水風呂や冷水シャワーが体温調節と熱中症対策に有効
暑い季節だからこそ、自分の体調と相談しながら、無理なく・心地よく・安全にサウナを活用していきましょう。
正しい知識をつければ、夏のサウナは“危険”ではなく快適な夏を過ごすための味方になります。
参考文献:
井奈波 良一(岐阜大学 医学部 総合病態・予防医学講座)(2011年)「入浴と熱中症」
Bartłomiej P. Gmiat ら(ポーランド・Gorzów Wielkopolski 大学)(2015年)「Sauna-Induced Body Mass Loss in Young Sedentary Women and Men(若年の運動習慣のない男女におけるサウナによる体重減少の影響)」
今西 隆浩 ほか(2024年)「サウナ浴による健常成人熱中症・脱水状態モデルにおける『スムーズイオン 経口補水液』の水・電解質補給効果」
Nathalie V. Kirby ら(バーミンガム大学)(2021年)「Intermittent post-exercise sauna bathing improves markers of exercise capacity in hot and temperate conditions in trained middle-distance runners」
Zhang, Davis, Casa, Bishop(米国研究者)(2015年)「Optimizing Cold Water Immersion for Exercise-Induced Hyperthermia」
Paul R Jones 他(イギリス)(2012年)「Pre-cooling for endurance exercise performance in the heat: a systematic review(暑熱環境下での持久力運動パフォーマンスのための事前冷却:系統的レビュー)」