運動後のサウナ習慣で持久力アップ、3週間で疲れにくい体に|中距離ランナーを対象とした実証研究
- 2025年6月12日

「サウナが運動能力を高める」という話を聞いたことがある方もいるしれません。
実際にその効果を科学的に検証した研究が、イギリスの大学から発表されました。
運動後のサウナ習慣が、暑さへの耐性や持久力にどのような影響を与えるのか。
本記事では、フィンランドの大規模研究を含む国際的な論文の内容をもとにデータとともに解説します。
目次
調査の概要
この論文は、運動後にサウナに入ることで得られる暑さへの適応と、通常環境下での運動能力の向上効果を検証した実験研究です。
トレーニング経験のある中距離ランナー20名を対象とした比較試験の結果です。
この研究では、3週間の持久力トレーニングに加えて、運動後にサウナ(101〜108℃、週3回前後)に28分間入るグループと、トレーニングのみを行うグループの効果を比較し、体温や心拍数、持久力指標(VO2max※や血中乳酸値※)を分析しました。
※VO2max:「1分間に体が取り込める最大の酸素量」を示す指標で、持久力や運動能力の高さを表す。
※血中乳酸値:運動中に体内で発生する「乳酸」の血液中の濃度を示す指標で、疲労のたまり具合や運動の強度を把握するために使われる。
項目 | 内容例 |
---|---|
タイトル | Intermittent post-exercise sauna bathing improves markers of exercise capacity in hot and temperate conditions in trained middle-distance runners (運動後の断続的なサウナ入浴は、訓練を受けた中距離ランナーの高温および温帯条件下での運動能力の指標を改善する) |
著者・研究機関 | Nathalie V Kirby ほか(バーミンガム大学) |
発表年 | 2020年 |
出典 | European Journal of Applied Physiology |
論文リンク | https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7862510/ |
主な調査結果
\調査結果をまとめると…/
- サウナに入ったグループは通常のトレーニングのみよりも、体温・心拍数の低下、持久力向上が大きかった。
- 3週間のサウナ習慣で暑熱適応とVO2max向上を実現。
- 7週間続けても大きな追加効果は見られなかった。
暑さに強くなる(暑熱適応)
3週間で、サウナ群は最大直腸温度が0.2℃、皮膚温が0.8℃、心拍数が11回/分それぞれ低下。
これは身体が効率的に熱を逃がせるように適応した証拠であり、通常のトレーニングだけでは得られなかった変化です。

3週間のサウナ習慣により、運動時の直腸温・皮膚温・心拍数が有意に低下。7週間後の追加効果は小さいことから、3週間で暑熱適応はほぼ完成すると考えられる。
VO2max・持久力の向上
サウナ群は最大酸素摂取量(VO2max)が8%向上し、走行持続時間も12%延びました。
乳酸閾値(疲労がたまる速度)も上昇し、より高いペースを維持できるようになっています。
7週間続けても効果はほぼ頭打ち
7週間続けた場合、さらに体温が0.1℃低下したものの、それ以外の指標に大きな変化はありませんでした。
つまり、3週間でほぼ最大限の効果が得られると考えられます。

トレーニング後にサウナを取り入れたグループ(赤)は、VO₂max、乳酸閾値スピード、運動継続時間(TTE)すべてでコントロール群(青)より有意に向上した。
結論
この論文は、運動後にサウナを取り入れることで、暑熱への耐性と運動能力の両方が向上することを示しました。
特に、アスリートや暑さの中で活動する人にとって、現実的かつ効果的な手法といえます。
週3回・30分のサウナでも十分な効果が期待でき、トレーニングの妨げにもならないのがポイントです。
サウナ好きの方は、運動後のサウナが実は身体を強くする近道かもしれません。
関連文献:
サウナ中は軽い運動と同じ心臓負荷|血圧・心拍数の変化を実測したドイツの研究
サウナで血管の柔軟性が向上|フィンランド研究でわかった血圧・心臓への効果
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