サウナと健康寿命|心疾患・認知症・免疫への効果を示したフィンランドの研究
- 2025年6月12日

「サウナが健康に良い」とよく聞きますが、実際に科学的な裏付けはあるのでしょうか?
本記事では、フィンランドの大規模研究を含む国際的な論文「Sauna use as a lifestyle practice to extend healthspan」の内容をもとに、サウナの健康効果についてデータとともに解説します。
目次
調査の概要
この論文は、近年注目されている「サウナの健康効果」について、さまざまな研究(観察研究・介入試験・生理学的メカニズムの検証)をもとに、総合的にまとめたレビューです。
特に注目すべきは、フィンランドの中年男性約2,300人を対象とした大規模コホート研究(KIHD:Kuopio Ischemic Heart Disease study)の結果です。
この研究では、対象者の生活習慣・サウナの利用頻度・健康状態(心疾患・認知症・死亡など)を10〜20年にわたり追跡し、統計的に関連性が分析されました。
こうした長期かつ大規模なデータにより、サウナの利用と健康リスク低下との関係が科学的に裏付けられています。
項目 | 内容例 |
---|---|
タイトル | Sauna use as a lifestyle practice to extend healthspan |
著者・研究機関 | Rhonda P. Patrick, Teresa L. Johnson |
発表年 | 2021年 |
出典 | Experimental Gerontology |
論文リンク | https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0531556521002916 |
要旨 | 週4回以上のサウナ習慣が心血管死のリスクを63%低下させた |
主な調査結果
\調査結果をまとめると…/
- 心疾患や認知症のリスクが大幅に低下
- 運動に近い生理反応で血管・心拍機能が改善
- うつ病や統合失調症などの精神疾患リスクが下がる
- 筋肉量の維持に役立つ
- 免疫力が高まり、肺炎・風邪のリスクが30〜40%低下
1. サウナ利用頻度と死亡率の関係
週に4〜7回サウナを利用している人は、週に1回以下の人と比べて、心疾患による死亡リスクが最大63%低下していることがわかりました。
さらに、全死亡率は40%、アルツハイマー型認知症のリスクは65%低下しており、非常に有意な関連が認められています。
これらの結果は、「サウナの利用頻度が多いほど健康リスクが低下する」という用量依存的な関係を示しています。
2. 身体的影響(運動と類似した生理反応)
サウナは一時的に心拍数や血圧を上昇させますが、継続的に利用することで、血圧の安定化・動脈の柔軟性向上・心拍変動(HRV)の改善など、身体に良い変化が現れます。
こうした生理的反応は、中〜高強度の有酸素運動と非常によく似ており、運動が難しい人にとって代替手段となる可能性も指摘されています。
3. 認知症・精神疾患への効果
サウナの利用頻度が高い人ほど、うつ病や統合失調症などの精神疾患の発症リスクが有意に低いことが報告されています。
これは、熱によるストレス刺激が脳内の神経栄養因子(BDNF)やエンドルフィンの分泌を促進するためと考えられています。
4. 筋肉量とサルコペニア対策
サウナの熱刺激によって熱ショックたんぱく質(HSP70やHSP90)が活性化されることで、筋肉の分解を抑え、再生を促す効果が期待されます。
加齢や病気により起こる筋肉量の減少(サルコペニア)の予防や回復手段としても有望とされています。
5. 免疫機能と呼吸器疾患
週に複数回サウナを利用する人は、肺炎や風邪などの呼吸器疾患のリスクが30〜40%ほど低下していることが報告されています。
この背景には、白血球やリンパ球の増加、そして熱ショックたんぱく質(HSP)による免疫機能の調整作用があると考えられています。
結論
この論文は、「サウナ習慣が健康寿命を延ばす可能性がある」という仮説に対して、疫学的な調査データ、生理学的な反応、分子レベルのメカニズム、そして臨床研究の結果を組み合わせて検証した包括的なレビューです。
とくに、頻繁なサウナ利用が、心疾患・認知症・精神疾患・筋萎縮・免疫低下といった「加齢に伴う多くの課題」に対して予防的・改善的に働く可能性を示しています。
こうした知見は、サウナが単なるリラクゼーション手段ではなく、健康を支えるライフスタイルの一部としての有効性を裏づけるものと言えるでしょう。
関連文献:
サウナと風邪の関係を検証|定期的なサウナ浴が発症リスクを減らす可能性を示す研究を解説
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